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食べるだけじゃない「よもぎ」の力
穀雨とは、草も木も芽吹き、生き生きしてくる時期にあたります。
その始まりとなる初候に、愛らしく咲き並ぶのはチューリップ。旬となるのがゴボウや鯵。朝方の気温もぐっと暖かくなることから、なかなか寝床を離れられない方も多いでしょう。つぎに訪れる次候で、旬を迎えるのは「よもぎ」やイトヨリなど。いよいよ終わりの末候には、牡丹(ぼたん)の花が咲き、海ではサザエ、山では山菜のこごみが旬となります。
そして、立春から数えて八十八の夜が過ぎた日、「八十八夜」を迎えるのもこの頃。「夏も近づく…」の歌でよく知られるように、茶摘みに適しており、夏の始まりを教えてくれる節目ともなっています。ちなみに、穀雨のあたりは「五風十雨」といって、5日に一度は風が吹き、10日に一度は雨が降る、作物が順調に育つ天候だとされています。
この季節に注目したいのは、先ほど次候の旬としてご紹介した「よもぎ」。昔から葉をもんで傷口にあて、消毒や殺菌、止血に用いられてきたほか、伝統的なお灸の原料ともされる多能な植物です。食べる場合は、尿の出を良くしたり、出血を抑えたりするはたらきに期待が。血尿や生理過多による貧血など、身体のめぐりが気になる方に重宝されてきました。さらにもうひとつ、おすすめなのが大豆。イソフラボンという、女性ホルモンに似たはたらきをする成分で知られています。
芽生えの時期である穀雨には、身体の成長バランスを保つことが大切なので、更年期の女性はもちろん男性も摂っておきたいもの。また、大豆そのままでなくても、味噌や醤油、納豆など、いろいろなカタチで摂りやすい食品です。
「よもぎ餅」で健やかに次の季節へ
さて、この季節を代表する味覚といえば、やはり「よもぎ餅」。
よもぎの新芽を餅米などに練りこんだ甘味で、「草餅」と呼ばれることもあります。その特徴的な香りは、シネオールと呼ばれる成分によるもの。リラックスや安眠に良いとされています。一方で鮮やかな緑色のもとになっているのが、クロロフィルという色素。こちらは血のめぐりにはたらき、身体を温めるとされています。
さらに、身体を整えるためのミネラルや食物繊維もたっぷり。旬の美味を楽しみつつ、こころと身体をしっかり癒せるのは、まさに受け継がれてきた生活の知恵だといえます。
ぜひ昔ながらの味わいで、春のつかれをスッキリさせて、健やかに夏を迎えましょう。
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