Yojo Column

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立春(りっしゅん)/
さりげなく、春を知らせる

明治国際医療大学教授

伊藤 和憲

春の始まりは明るい色をポイントに

 立春は春の始まりを告げる節気であり、旧暦ではこの時期から新年が始まると考えられています。何事もはじまりが肝心。ここで心も体もしっかりと充実させられるかどうかで、1年が大きく変わるかもしれません。
 春は、冬の間に貯めたエネルギーを解き放ち、新しいことに挑むのにふさわしいとき。本来なら充実した季節となるはずです。ただし、そのエネルギーをうまく発散できなければ、ストレスがたまり、不安になることも。そんなわだかまりをそのままにしておくと、後々で大きなトラブルにつながりかねません。ちょっとしたことでもなおざりにせず、心と体のケアに努めましょう。
 そして、春の始まりとはいえ、まだまだ寒い日もあり、マフラーや手袋などの防寒着を手放せないこの時期。大胆に春らしい色を着こなすには、ちょっと早すぎるかもしれません。そこでおすすめなのが、ブローチやネックレス、髪飾りなどにさりげなく、赤や橙などの明るい色をポイントとして取り入れること。これから春に向けてエネルギーを解き放ち、新たな気持ちでスタートを切るための後押しとなってくれそうです。

強さの赤、活発さの橙で気持ちを高める

 「赤」はひとの目につきやすく、強いインパクトをもたらし、気分を高揚させる力があるとされています。強さ・エネルギー・外交性・リーダーシップを想起させ、元気と回復力を与えてくれるともいわれます。同じように「橙」にも、活発や元気といった陽のイメージが。このような暖色系は、黒や暗めの色と組み合わせると、さらにエネルギッシュなイメージを演出できます。たとえワンポイントでも、自分の心はもちろん周りの気持ちまで華やげてくれる、こうした色合いをうまく取り入れることで、さりげなく春の訪れを知らせてみてはいかがでしょう。
 ちなみに、この時期に行われるのが「針供養」。着物が主流だった時代、裁縫は女性の大切な仕事でした。そこで女性たちは、折れた針や使い古した針の労をねぎらうため、感謝を込めて豆腐やこんにゃくに刺し、神社に供養・奉納。自身の裁縫がうまくなりますように、と祈ったそうです。東日本では2月8日、西日本では12月8日に行われることが多く、両日を合わせて「事八日」と呼び、事始め、あるいは事納めの日としています。現代の私たちも、いつも当たり前のように着ている服やそれを縫う道具に感謝する機会としたいものです。